遺言が無い場合、法定相続人全員による遺産分割協議によって、遺産の分け方が決められます。

しかし、法定相続人の中に、知的障がいや精神障がいなどにより判断能力を欠く人がいる場合、その人は遺産分割協議に参加することができません。

なぜなら意思能力(法律行為を行うことができる判断能力が有すること)の欠けた人が行った法律行為(この場合は遺産分割協議)は無効であると、民法で決められているからです。

この場合、知的障がい等である人の代理人として、成年後見人を選任して、その成年後見人が本人を代理して遺産分割協議を行うことになります。

成年後見人を選任するにも、司法書士費用などお金がかかりますし、成年後見人が選任されると月額で報酬を支払う必要があります。

成年後見人には多くの場合、家庭裁判所によって、弁護士や司法書士などの赤の他人が選任されます。
(親族が成年後見人に選任されている割合は2割程度です)

しかも、成年後見人は、遺産分割協議が終わっても任務は終了せず、その成年被後見人が死亡するまで、後見が続くことになります。

家族にとっては、成年被後見人が死亡するまで、赤の他人である弁護士や司法書士に成年被後見人の財産を管理され、月額報酬を支払い続けなければならなくなるのです。

これが成年後見制度(より正確に言えば法定後見制度)の大きなデメリットです。

相続をきっかけに成年後見制度を利用せざるを得ない事態を避けるには、遺言を作成することです(さらに遺言執行者を指定しておくことが望ましいです)。

遺言があれば、遺産分割協議をしなくても相続手続きができるので、知的障がい等の法定相続人がいる場合でも、遺産分割協議をするためだけに成年後見人を選任する必要がありません。

遺言を作成しておくことは、成年後見制度のデメリットから法定相続人を守るだけでなく、法定相続人の親族をも守ることになるのです。

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