自筆証書遺言は名前の通り、自分で手書きで記述する遺言で、公証役場に出向かず作成することができます。
手軽に、費用をかけずに作成できることから、多くの方が利用している遺言の形式です。
ただ、その手軽さ故に、以下のようにデメリットやリスクがありますので、注意が必要です。
自筆証書遺言のデメリットやリスクを軽減するには、行政書士などの専門家にアドバイスを求める、遺言書保管制度を利用するなどの方法がありますので、積極的に利用しましょう。
また、遺言書には、他にも秘密証書遺言と公正証書遺言という種類がありますが、両方とも公証役場での手続きが必要である点が、自筆証書遺言と大きく異なります。
このページの目次
自筆証書遺言を作成するメリット
自分だけで作成できる
自筆証書遺言は、誰に関与してもらうことなく、自分一人で作成できます。
紙とペンがあれば、今すぐにでも作成できるのは、自筆証書遺言の大きなメリットの1つでしょう。
費用がかからない
自筆証書遺言を作成するのに、費用はかかりません。
秘密証書遺言や公正証書遺言を作成するには、公証役場に手数料を支払わなければなりません。
自筆証書遺言であれば、公証役場に出向く必要がないので、手数料は発生しません。
変更・修正・撤回が用意であること
自筆証書遺言は、自分で手書きで作り直せばよいため、変更・修正・撤回が容易と言えるでしょう。
遺言は一度作ったら終わり、ということはなく、随時、財産やご家族の状況の変化に対応して、書き直す必要が生じます。
その際に、公正証書遺言のように、いちいち公証役場で手続きする必要がなく、書き直せるのは、自筆証書遺言のメリットと言えるでしょう。
遺言書保管制度を利用すれば検認手続きは不要
自筆証書遺言は、遺言者の死亡後、家庭裁判所における検認という手続きを経て、遺言の執行ができるようになります。
検認手続には、添付書類を集めたり、家庭裁判所に申立てをするなど、時間と手間がかかります。
しかし、作成した自筆証書遺言を、遺言書保管所(法務局)で保管してもらう制度を利用すれば、この検認手続きを省くことができます。
遺言書保管制度には、他にも、遺言者の死亡後に相続人や受遺者に通知される仕組みがある、変造・偽造・隠蔽の心配が無いなど、自筆証書遺言のデメリットを補う効果がありますので、自筆証書遺言を作成する際には、積極的に利用を検討するとよいでしょう。
自筆証書遺言を作成するデメリット
紛失の可能性がある・発見がしづらい
公正証書遺言の場合、原本は公証役場に保管され、正本や謄本(写しのことです)も発行されます。
また、遺言の検索システムがあるので、公証役場で手続きをすれば、遺言の有無を確認することが可能です。
これに比べて自筆証書遺言は原本1つしかなく、原本をご家族の誰かが見つけられなければ、せっかく作成した遺言が発見されない恐れがあります。
発見されなければ、遺言無しで相続手続きがなされることになり、遺言者の意思を反映した遺産の分け方を実現できません。
変造・偽造・隠蔽のリスクがある
遺言者の生前、あるいは死後に、自筆証書遺言を発見した相続人が、自分に都合の悪い部分を勝手に書き換えたり、あるいは遺言そのものを隠してしまったり、逆に、自分に都合の良いように遺言を偽造することも、自筆証書遺言であればできてしまいます。
無効になる可能性が高い
自筆証書遺言は法律により形式が厳格に定められています。
正しい形式を備えていない自筆証書遺言は無効になってしまいます。
また、自筆証書遺言は自分ひとりで作れてしまうため、遺言の内容が法律的に、あるいは、相続対策として行き届いていないことがよくあります。
遺族のことを思い、よかれを思って作った遺言書が、逆にトラブルの原因になってしまうこともあるのです。
このような事態を避けるには、行政書士などの専門家にチェックしてもらうなど、作成時において十分な検討を行う必要があるでしょう。