公正証書遺言とは、公証人が作成する公正証書によって行う遺言のことをいいます。
公正証書遺言は、公証人が作成し公証役場に保管されるため、安心・確実です。
公正証書遺言にはメリットとデメリットがあるため、それぞれを十分知っておくことが必要です。
このページの目次
公正証書遺言のメリット
遺言が無効にならない
自筆証書遺言は、法律により、厳格に形式が定められています。
形式を満たさない自筆証書遺言は無効になってしまいます。
遺言者本人が自分ひとりで作成するため、形式を満たさず、無効になってしまう可能性が少なからずあります。
一方、公正証書遺言は、法律知識を持つ公証人が作成する証書ですから、形式の間違いのために無効になることはありません。
また、自筆証書遺言では、作成時の状況や判断力などが疑われ、遺言無効訴訟に発展する可能性も考えられます。
例えば、誰かにそそのかされて作成した遺言書や、認知症により十分な判断力がないまま作成した遺言書が考えられるでしょう。
一方、公正証書遺言は遺言者・公証人・証人の三者が関わるため、遺言者が認知症だった、誰かにそそのかされた、などの遺言無効訴訟を回避しやすくなります。
紛失のリスクがない
自筆証書遺言の場合、遺言者が死亡して、遺言の執行という段階になって、遺言書を発見できないというリスクがあります。
※ただし、令和2年から始まった遺言書保管制度を利用すれば、相続人に対する通知の仕組みがあるのて、このような紛失のリスクはありません。
公正証書遺言は、公証役場に保管されるため紛失するリスクがなく、そういった事態を心配する必要はありません。
変造・偽造・隠蔽ができない
自筆証書遺言は相続人等の都合の良いように変造・偽造されたり、隠蔽されたりする心配がありますが、公正証書遺言は公証役場に保管されていますから安心です。
自筆する必要がない
自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言は公証人が作成するので、手書きで書く必要がありません。
したがって、病気や障害のために自筆できない方でも、遺言を作成することができます。
スピーディーに相続手続きを開始できる
自筆証書遺言の場合は、相続が発生したとき、家庭裁判所における検認が必要です。
検認には添付書類を集めたり、家庭裁判所の申立てを行うなど、時間と手間がかかります(1~2ヶ月程度)。
公正証書遺言では検認は不要なので、相続開始後、すぐに相続手続きに着手できます。
公正証書遺言のデメリット
公証役場で手続きするのに必要な準備がある
公正証書遺言の作成は、公証役場での手続きになります。
公証役場には、遺言者の戸籍謄本や印鑑証明書、相続人・受遺者となる方の住民票など、提出しなければならない書類があります。
また、公証人とのスケジュール調整、証人の手配なども必要です。
自筆証書遺言の場合は、紙とペンがあれば、その場ですぐに作成できますが、公正証書遺言の場合は、このような事前の準備作業が必要です。
手続きに費用がかかる
公正証書遺言の作成には、遺言で譲り渡す財産の価額に応じて公証人に手数料を支払う必要があります。
また、遺言者が病気などで公証役場に直接行くことができない場合は、出張費として公証人の日当が追加で発生します。
無料でできる自筆証書遺言とは異なるので注意しましょう。
公証人や証人に遺言内容を話さなくてはならない
公正証書遺言の作成には、公証人と証人2人以上が携わります。
少なくともこの3人には、遺言の内容を知られてしまうことになります。
遺言内容をどうしても知られたくない場合には、公正証書遺言はあきらめて、自筆証書遺言、または、秘密証書遺言という選択肢から選ぶことになります。
自筆証書遺言を選んだ場合、遺言の内容を誰にも知られることなく作成することはできますが、反面、専門家による法律的なチェックを受けないことによるリスク、紛失のリスクなどを抱えることになります。
秘密証書遺言の場合、文書を入れた封筒の上に、公証人と証人の署名押印するだけでいいため、遺言の内容を見られることはありませんが、自筆証書遺言と同じく、専門家による法律的なチェックを受けられないことになります。
そのため、自筆証書遺言と秘密証書遺言では、無効になるリスク、遺言があるためにかえってトラブルが発生するリスクがあることになります。
どの形式の遺言書にするかは、作成前に専門家とよく相談した方がよいでしょう。