遺言というと「死ぬ間際に書くもの」と思っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、結論から申せば、遺言書はなるべく早いうちから書いておいた方がよいのです。
「今はまだ早い」と思っているうちに、書くタイミングを逃してしまう例が続出しています。
そこでこの記事では、
- 「遺言書は何歳から作れるのか?」
- 「遺言書はいつごろから書き始めるべきなのか?」
- 「遺言書が作れなくなる時とは?」
といった疑問にお答えしていきます。
このページの目次
遺言書は何歳から書けるのか?
まず、遺言は何歳から作れるのかについては民法で
「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」
と定められています。
一般的に、成人として、本人の意思で法的な契約などを行う際に必要とされる通常の「行為能力」である18歳より低い年齢で設定がされています。
遺言というのは、できるだけ遺言者の最期の意思を尊重して遺産相続を行う制度になります。
そのため、遺言という行為の意味がわかる年齢であれば、通常の法的な契約等に必要とされる行為能力(18歳)までは必要なく、15歳という年齢が定められています。
遺言書は若いうち、20代30代のうちから書くべき?
「遺言書は若いうちから書くべき」と言われても、それがなぜなのかピンとこない方が多いかと思います。
そこでここでは遺言書を書いていなかった場合に考えられるリスクを2つ紹介します。
突然の死による財産の凍結→遺族の困窮
若いからと言って、いつ事故や病気で命を落とすともかぎりません。
そのような形で突然亡くなってしまった場合、その後に困ってしまうのが残された配偶者や家族になります。
人が亡くなると、金融機関のある預貯金は「凍結」され、引き出しができなくなってしまいます。
また、遺産に不動産がある場合、その不動産はしかるべき相続手続きを経ないと、名義変更(いわゆる相続登記)ができません。
法定相続人が配偶者と子であれば、あまり複雑ではありませんが、若くして亡くなった場合、子がいなければ、配偶者と亡くなった方のご両親が法定相続人になることがあります。
ここで相続手続きがスムーズに終わればよいのですが、配偶者と義理の父母の間で相続をめぐる相続争いが発生するような場合、相続手続きの完了まで長くかかってしまう場合があります。
そうすると、預貯金が「凍結」されているために、残された配偶者が金銭的に困窮する可能性があります。
こういった事態を防ぐことができるのが遺言書になります。
若いうちから遺言書を作成しておくことで、こうした配偶者の悲劇を未然に防ぐことができるようになります。
自身が突然の死を迎えることはあまり考えたくないものですが、死後の配偶者の生活や両親と配偶者の関係性など様々な問題をクリアにするためにも若いうちから遺言書を書いておくことが肝要になります。
病気・事故等による遺言能力の喪失
認知症・脳の病気、または、不慮の事故等により遺言能力を失ってしまうことがあります。
遺言能力が低下した後には、遺言書を作成することができません。
本来であれば避けられたはずだったのに、遺言が書けないために相続トラブルが起こってしまうことがあります。
こういった事態に陥らないためにも、■■■■■■■■■■■■■■■■こちらのチェックリストに記載したような、相続トラブルの種を持っている方は、できるだけ早いうちに、遺言を作ることをおすすめします。
遺言を作るのに「早すぎる」ということはありません。
遺言書を検討するタイミング
実際に遺言書を作成される方は、人生のなかで大きなライフイベントや節目が訪れた際に遺言書を書くことを検討される方が多いようです。
ライフイベントや節目とは具体的に、結婚、マイホームの購入、子の誕生、定年退職、配偶者をなくした時といったタイミングです。
上記のようなタイミングで遺言書を残される方が多いのは以下のような理由からになります。
結婚や子の誕生などのタイミング
配偶者を持ち、子が誕生することで、その方の推定相続人(亡くなったら相続人になるべき人)が大きく変わります。
責任の持つべき家族が出来たことで、万が一のことが起きた時に、家族が大変な思いをしないように、遺言を残そうと思い立つのです。
マイホームの購入
マイホームの購入は、不動産を持つことです。
不動産は、預貯金のように、簡単に分けることができないため、相続トラブルになりやすい財産です。
このようなトラブルを避けるには、遺言で不動産を相続するべき人を指定しておくことが有効です。
定年退職
退職金によりまとまったお金を持つようになります。
また、定年退職以後は、財産状況が大きく変わるようなことは考えにくいことから、第二の人生のスタートに合わせて、遺言を作成しようと思い立つというケースです。
配偶者を亡くした時
配偶者を亡くすと、残された配偶者の推定相続人が変わることになります。
子がいる場合には、子だけが推定相続人になります。
子がいない場合は、両親か、両親がなくなっている場合には兄弟姉妹が相続人になります。
子供が未成年の場合は、本人たちで解決するには難しい問題となるため、予め遺言書を残す方がよいでしょう。
また、兄弟姉妹には遺産を渡したくない、と思われる方も少なくありません。
そのような時に、遺言で、遺産を渡したい人を指定することができます。
(遺言があれば、親族以外の人(受遺者)に遺贈することができます)
まとめ 遺言書が作れなくなる時とは?
いつでも作り始めることができ、しかも、できれば早く作った方がよいのが遺言です。
しかし、作るべきタイミングを逃してしまう方が後を絶ちません。
その最大の原因は、認知症をはじめとする、脳の病気によるものです。
これらの病気を発症してしまうと(程度にもよりますが)、遺言を作ることができなくなってしまいます。
認知症は、65歳以上の7人に1人が、85歳以上の2人に1人がかかっている病気です。
こちらのチェックリストの項目に1つでも当てはまる方は、先送りせず、遺言の作成に着手することをおすすめします。